ゆたか野の家

やがて時間が棲む。

家は住み手と一緒に成長し、家族の歴史とともに歩むもの。娘の誕生を祝って庭に植えた一本の梅は、小学校に上がる頃から毎年たくさんの実をつけ始める。柱のキズ、壁のシミの一つひとつが、そこで暮らす家族の思い出そのものだ。
新築した頃の新しい家に、こうして家族の時間が棲みつくようになる。 「ゆたか野の家」はこうした家族の成長とともに、自由に手を加えることのできる余白をたくさん残し、おおらかな空間で構成している。玄関を入ると土間が庭まで続いており、「庭にまわってくださいな」。ちょっとした来客に家人がそう呼びかける声が聞こえてきそうだ。
庭には広い月見台。洋風に言えばウッドデッキテラスか。杉板の塀は家を囲い込まない高さで、風と挨拶の通り道。道行く人が挨拶を交わしながら過ぎていく。一階には15帖大の広間。杉に囲まれたこの空間は、ほのかに杉の芳香が漂い時間の経過を忘れてしまうほどの心地好さ。隣接する吹き抜けのいろりは冬のおもてなし。
四季を感じて楽しく暮らす---ちょっと前まで、ごく普通の日本の民家が備えていた装置が、この家には、たくさんある。



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